ゲスト:平成立石病院 院長 大澤 秀一さん かつしかFM「なかまで介護」第95回(2021年12月2日放送分)

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「なかまで介護」
毎週(1・3週)木曜日10:00-10:54 放送中!

なかまゲスト

平成立石病院 院長 大澤 秀一さん 

平成立石病院について

マスター:まずは平成立石病院の概要についてご紹介します。

2002年4月に開院されて来年で20周年。203床の急性期病院で東京都の災害拠点病院にもなっています。8月の第5波の感染拡大によってコロナ病床を73床まで増やして対応され、収束が見えてきたところで現在はコロナ病床を45床に戻し、その他が一般病床となっています。コロナ禍では患者の入院重点医療機関として積極的に患者さんの受け入れをされました。NHKなどでそのご様子はご存じだと思います。猪口理事長は東京都医師会の副会長でもあり、東京都や葛飾区医師会の活動に対して積極的に参加。特に救急や災害時には医師会として関わりながら、地域のための役割を担っていただいている病院です。

新型コロナウイルスとの1年8か月

マスター:新型コロナウイルスについて、ここまでの振り返りをお願いします。

約2年近く前に武漢で謎のウイルスの話があって、その後1月に横浜のダイヤモンドプリンセス号で感染者が出て、うちがコロナに対して動き出したのがその頃でした。横浜市や神奈川県でもどうにも立ち行かなくなって東京に支援を求めた時に、災害拠点病院でもあり、うちの救急部の大桃先生がダイヤモンドプリンセス号に関わっていたということもあって、そこの患者を受け入れましょうと昨年1月後半2月初旬頃から準備を始めました。そこから患者を受け入れまして、先月11月は軽症者2名でしたが、これまで約1,000人、正確には970名ぐらいのコロナ患者さんを受け入れたということになります。

マスター:発症していない方ではなく、中等症や重症の患者さんを受け入れるということでしょうか。

そもそもうちは中等症までということになっていたのですが、約1年前の第3波の時には結局、中等症から重症化した患者さんをより高次の医療機関への転送ができず、自分たちで重症の患者を扱わなきゃならなくなりました。さらに今年8月の第5波では、患者さんが急増したことによって第3波と同じような状況が訪れて、重症化した患者さんも受けざるを得なくなり、結果的に約1,000人の患者のうち約5%(50人)ぐらい重症の患者を扱ったというのがこれまでの実績というところですね。

一方、ワクチン接種に関しても、東京都あるいは葛飾区の要請でこれまでに約4,000名、一人あたり大体2回受けますから約8,000件のワクチン接種をさせて頂きました。

さらに8月の第5波には、なかなか入院ができない患者さんの自宅待機が増え、その中間地点としての入院待機ステーションを東京都の要請を受け、都内第1号という形で当院隣の事務棟6階に開設しました。

マスター:現実としては、機械類もそれを操作する人も、ドクターも看護師さんも、それを受け入れるというのは本当に大きな決断ですよね。

目の前で容態が悪くなっている患者さんを(大きな病院に)送れないという現実は、現場ではもうどうすることもできません。ある程度覚悟を決めてここで何とかするしかないという心理状態に。ただ、現場のスタッフはかなり厳しい部分もあったのも事実ですね。

店長:報道でもセンセーショナルな場面というのも映像に写っていましたから、こうなったらやるしかないだろうというのが本音だったように思います。

覚悟を決めるみたいなところもありました。いろんな意味で精神的にきついのも事実でしたし、スタッフは泣きながら仕事をしていましたね。本当にかわいそうで、何とかしてあげられないかなというのもありました。第3波でも第5波でもそうでしたね。

マスター:看護師さんやスタッフの皆さんも、現場から家に戻れば一人のお母さんお父さんであったり家族がいたり、その立場との間で、きっと葛藤があったのでしょうね。

なかなか家に帰るのも厳しくてホテル住まいをしたという話や、出来るだけ家族とは会わないようにしていたという話も実際聞きますね。

店長:大澤院長と別件でお話ししたときに、医者の自分たちというより、看護師の皆さんに対してすごく褒めてあげたいとおっしゃっていましたね。

そういう中で現場が何とか頑張ってこられた一つの要因には、全国の方、特に地域の中学校や小学校などから届く励ましのメッセージや手紙でした。院内に掲示して応援してくれるから頑張ろうねと心の支えにして、みんな乗り切れたんじゃないかなと思っています。

店長:「平成立石」というのが(メディア等で)出てくると本当に誇らしかったですね。

患者さん達からも頑張ってねと言う激励と同時に、地域のためにやってくれていることが誇らしいという話はよく聞きました。今も頑張ってねという激励の言葉をいただきます。

マスター:うちのグループホームでも、PCR 検査でスタッフが陽性になって待機したり訪問医療で来ていただいたり、いろんな部分で最終的に判断がつかないので、医療の現場や看護師さんと連絡取りながらやらせて頂いて、すごく助かりました。

第5波の8月は救急を受けることも難しくて、地域における訪問看護や訪問診療をやっていてコロナを診ている患者さんの容態の変化とかに対しての問い合わせあるいは施設内でクラスターに近い形になってどうしたらいいのかっていうことで、実際に人間を派遣してゾーニングとか陽性者を固めるとか、何回か施設を訪問したこともあります。本来、中等症であれば入院というところもままならない状況があって、もうちょっとなんとかできれば良かったという思いはあります。そのぐらい、かなり大変な時期でした。

マスター:2類に特定された場合、それなりの設備とか防御とか大変なんですよね。

1番はコロナ患者さんと一般を確実に分離をしなきゃいけない。1階の病棟がコロナの病床で空間的な分離がうまく機能したのが、コロナ患者を受け入れかつ一般の診療との併用がうまく出来たところかなとは思っています。それをどうするかがやはり大きい病院になればなるほど難しくなってくるので、患者が増えたから病床を増やせばいいという理屈では当然そうなのですが、そこにまずどういう風に病室を作るのか、スタッフもコロナを診ているスタッフと一般を診ているスタッフがごっちゃになるっていうのはできない。そこに専従みたいな形になるので、そのスタッフのやりくりというのも決して楽な話ではないと思います。

店長:平成立石病院は外来も入院もできる病院ですが、今は(別棟に)ペンギンクリニックがあるので一般とコロナの患者さんが診療を受けるところがちゃんと分かれていて、受診者側からすると(安心でした)。

空間的な分離だけじゃなく時間的な分離をする。例えばCT検査をするとかっていうのはどうしても交わらざるを得なくなりますが、そうすると発熱があって怪しいという患者さんはある程度まとめて検査をして、その間一般の人は入れない。終わったら消毒して一般の人に解放して。今までの経験というか、やってきたことを踏まえてうまく分離することができて、一般の人も比較的安心して外来受診してくださいという形が取れました。

店長:私の目から見て、コロナになってから患者さんの数が減っているように思います。

特に高齢者の方はまだ外に出ること自体が怖いということで受診控えしているように思います。少しずつ戻りつつありますが、コロナ以前のような状況ではないのが現状ですね。

マスター:日本中、医療の現場全体的としてそういう影響が出ているのでしょうか。

出ていると思います。医師会の話でもそうですし、近隣の開業されている先生や葛飾区内の先生のお話を聞いても、全体的に受診控えがおこっているという話を耳にしますね。

マスター:前回(2020年8月)出ていただいた時の質問で「コロナが怖いので病院に行かないように我慢しています、どうしたらいいですか?」というのがありました。「心配もあるけど、糖尿病とか腎臓病、歩行障害とか癌だとか重度の病気についての心配もしなくちゃいけない。医療機関は頑張って予防をしているので、ちゃんと診せに来てください」と言われました。やはり1年以上経ってもその部分が出てしまっているというのが現実でしょうか。

「ちょっと具合が悪いから病院に行く」というのが控えられていて、正しく「病気だから行く」ということになってきているのかもしれません。例えばインフルエンザが流行っていないのは、みんながマスクをして節制していることもありますから、健康という意味ではもしかしたらいいのかもしれないという思いもあります。

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新型コロナウイルスとワクチン

店長:ワクチン3回目というのは新しい株が出てくる前から検討されていたと思います。

いろいろメディアで言われていますけれど、やはりワクチン接種は2回で終了ではなくて今回の3回目でコンプリートするという認識の方がよろしいかと思います。ですから2回やった方は当然3回目を打たれた方がよろしいんではないかなと考えています。

店長:今は接種時期が(2回目を打ってから)8か月という原則ですが、それはそれぞれの自治体に前倒しでもいいというようなことをワクチン担当大臣の方がおっしゃっていましたが、今の葛飾区の感染状況をみても、原則8か月ということでよろしいでしょうか。

現状では、区の保健所等の会議の中でも原則8ヶ月以降というところですし、実際、医療従事者に関しても、高齢者も含めた一般の方の接種時期というのも概ね8ヶ月以降というところを基準に予定されています。

店長:医療従事者にあたる大澤院長たちとしては、もう12月に始まりますか?

当院では、コロナに関わるスタッフ100人に関しては、先行して昨年3月に打っているので来週から、他のスタッフに関しては1月以降です。一般の方は2月以降の予定です。

マスター:自治体から接種券がくるということですね。

問診票が入っていますので、そこに記入して接種します。

新型コロナウイルスの治療薬について

店長:飲み薬や点滴薬など治療薬はインフルエンザと同じように現実的なのでしょうか?

内服薬に関しては国内でもかなり治験が進んでいますし、ファイザー社で内服の薬を出すというのもあり、以前より戦う武器は増えてきています。これが今回のオミクロンに効くのかというとこれは別で、もう少しいろんな研究者が今必死になってワクチンがどの程度効くのか、治療薬に対してどうなのかというところまで見ていますから、その辺の情報をしっかり受け止めながら対応していかなくてはと思っています。

インフルエンザワクチンの供給と検査について

店長:今年はインフルエンザが流行るのではないかと言われています。インフルエンザワクチンが不足しているとも聞きますが?

現場的には不足しているような状況はなくて、希望者にはほとんど打てているのではないかと思います。どういう風になるかわからないので、インフルエンザワクチンもぜひ受けた方がよろしいかと思います。今はインフルエンザの感染とコロナの感染とを並行してみられる検査キットもありますので、発熱という形で怪しければ、簡易検査になりますが、ある程度どちらに感染しているかという判断はできると思います。

マスター:時間的にはどれくらいかかるのでしょうか?

15分~20分くらいでしょうか。どちらかが少し時間がかかったと思います。それでも1時間くらいで結果がわかり、発熱の患者さんは一般の方と分離してお待ちいただきます。

時間外や休日に関しては、ER(救急)の方で対応するようになっています。

コロナと共生してゆく上での対応と心構え

店長:これから先どういうふうにしていけばよいか、アドバイスをいただけますか。

まずワクチン接種をやっていただいて、あとはメディアでも言われているように、マスクをして手指消毒うがいをして自分の身は自分で守る心がけが大事ですね。それと不安があったり熱が出たりという時は早めに対応することが大事かなと思います。

マスター:みんな閉じこもっていたので自己免疫が弱ってしまった方もいると思います。

高齢者のフレイルという問題があります。受診控えされている高齢者の方々が、免疫が落ちて、本当に悪くなってから受診されるんじゃないかと危惧しています。ちょっと具合が悪いかなとなったら、高齢者は特に早めに医療機関を受診されることをおすすめします。

大澤院長からのメッセージ

店長:最後に聴いている方へのメッセージをお願いします。

10月1日から救急救命士法が改正されました。当院には十数名の救急救命士がいて、うちの救急部門を支えているといっても過言ではないくらいしっかり対応してくれています。地域の救急医療に関して、皆さまのお役に立てるよう、日々の医療を展開したいと思っております。救急車に限らず、ウオークインで来た患者さんに関しても対応いたしますので、何か困ったことや心配されることがあれば、ぜひ受診されることをおすすめします。

 

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かつしかFM「なかまで介護」

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