01認知症を理解する

認知症を理解する

認知症とは

病気などいろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったために、記憶・判断力などのさまざまな障害が起こり、普通の社会生活が困難になる状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。

ひとことで「認知症」といっても、原因となる疾患や症状は様々です。
その原因となる疾患によって出やすい症状が異なり、中には原因は違っても同じような症状があったり、複数の原因が重なって症状が出たりすることもあります。

なお、65歳未満で発症する場合は、「若年性認知症」と呼ばれます。

認知症の原因とタイプ

神経変性疾患
病気によって脳の神経細胞がゆっくりと死んでいき脳が委縮する。
アルツハイマー病が最も多く、他に ピック病などの前頭・側頭型認知症、レビー小体型認知症 などがある。
脳血管性認知症
脳梗塞・脳出血・脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう。

この他、正常圧水頭症や甲状腺の障害などが原因の場合には、早期に治療すれば治る可能性のあるものもあり、早期に正しい診断を受けることが勧められています。


出典:認知症サポーター養成講座標準教材(全国キャラバンメイト連絡協議会 作成)

認知症の症状

記憶障害

人間の脳には、目や耳が捕らえたたくさんの情報の中から、関心のあるものを一時的に捕らえておく器官(海馬)があり、これを仮に”イソギンチャク”と呼びます。重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壺」があると考えてください。
いったん「記憶の壺」に入れば、普段は思い出さなくても、必要なときに必要な情報を取りだすことができます。
しかし、年をとるとこの”イソギンチャク”の力が衰え、一度にたくさんの情報を捕まえておくことができなくなり、捕まえても、「壺」に移すのに手間取るようになります。
「壺」の中から必要な情報を探しだすことも、ときどき失敗します。
年をとって、もの覚えが悪くなったり、ど忘れが増えるのはこのためです。
それでも”イソギンチャク”の足はそれなりに機能しているので、二度三度と繰り返しているうち、大事な情報は「壺」に納まります。
ところが、認知症になると、イソギンチャクの足が病的に衰えてしまうため「壺」に納めることができなくなります。
新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。
さらに、病気が進行すれば、「壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。


出典:認知症サポーター養成講座標準教材(全国キャラバンメイト連絡協議会 作成)

見当識障害

※見当識(けんとうしき)とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することをいいます。

まず、時間や季節感の感覚が薄れ、今日は何月何日かと何回も聞いたり、季節に合わない服を着たりするようになります。
進行すると近所でも自宅までの道がわからず迷子になったり、自分では歩けそうもない遠くに歩いて行こうとするようになってきます。
過去に獲得した記憶を失うという症状まで進行すると、自分の年齢や人の生死に関する記憶がなくなり周囲の人との関係がわからなくなります。
娘をお母さんと読んだり、“(亡くなっているのに)お父さんが心配するから”と遠くの実家に歩いて帰ろうとしたりすることがあるのはこのためです。

実行機能障害

健康な人は頭の中で計画を立て、予想外の変化にも適切に按配してスムーズに進めることができます。
認知症になるとこの段取りの能力が衰え、計画を立てたり按配をしたりができなくなって日常生活がうまく進まなくなります。
典型的な例として、料理でご飯を炊きながらおかずを作ることができなくなる、同じメニューばかり繰り返し作るなどが見られます。
NPOかつしか・シルバー介護相談室