ゲスト: 葛飾区医師会の稲葉先生 テーマ:認知症の早期発見・早期治療 かつしかFM「なかまで介護」第20回(2019年4月11日放送分)

  かつしかFM(78.9Mhz)から発信する地域包括ケア
「なかまで介護」
毎週(1~3週)木曜日10:00-10:54 放送中!

このサイトでは、ラジオ放送から数週間遅れで、youtube再放送版を公開しております。

なかまで相談室

高齢者総合相談センター水元公園 笹原さん

開所して半年の現状

マスター:2回目のご登場です。最近の相談ではどのようなものが多いでしょうか?

去年7月に開所して半年経ちまして、近所の皆さんもふらっと寄ってくれたりしています。今は介護が必要じゃなくても、いざそういう時になったらどこに相談したらいいのかわからないというのが課題でしたが、高齢者総合相談センターが身近にあるということで、お友達を作りたいとか医療機関に関するご相談も増えてきました。

シニア活動支援マップについて

マスター:「シニア活動支援マップ」というものを作られていると聞きました。

昨年、生活支援コーディネーターの方と一緒に地域の活動を調べさせて頂きました。介護予防に絞って載せたのですが、そこに載らなかった活動も含め、私達も知らなかったことがあって勉強になりました。

マスター:高齢者総合相談センター各エリアの細かい情報という感じなのでしょうか。

葛飾区は7つの地域(①水元②金町・新宿③亀有・青戸④立石・四つ木⑤南綾瀬・堀切・お花茶屋⑥奥戸・新小岩⑦柴又・高砂)に分かれていますので、7つのマップが存在します。もうすぐセンターの方にも届いてお配りできるかなと思います。

男性向けの教室や活動を教えて

マスター:社会問題にもなっていますが、男性が参加できる場所が見つからないと言います。男性が参加できそうなものって何かありましたか?

「男の料理教室」といって、水元学び交流館で第1木曜の夜に活動している団体がありまして、料理を通じて、また料理以外でもコミュニケーションを取っています。

マスター:その他にあったら教えてください。

葛飾アクティブ.COMさんが水元憩い交流館で「健康麻雀」をやっています。麻雀は男性がやるイメージでしたが、男性だけじゃなく女性の参加もありましたね。話をしないと出来ませんし、悔しがったり勝って笑ったりするのも、体にいいかもしれませんね。

マスター:確か IT 関連でもいろいろやられていますよね。

憩い交流館で、「iPad 講座」なども開いています。憩い交流館も学び交流館も年に1回のお祭りで発表の場があるので、地域の皆さんにも来てもらって、新しい活動の場を探して入って頂ければいいかなと思っています。

なかまゲスト

葛飾区医師会 稲葉先生

認知症対策(葛飾区の現状)

マスター:稲葉先生も2回目のご登場です。前回は、葛飾区内の15,000人くらいの認知症の方に対して区内の認知症専門のドクターが4人ぐらいということでした。それで医師会として動かれて認知症のサポーター医が26名、連携されている医院が130箇所以上、そこまで組織作りを数年間かけてされてきたとのこと。まだ進んでいるのでしょうか。

サポート 医が 29名に増えています。連携されている医院が130箇所以上ですね。また、認知症対策委員会が医師会の中で立ち上がってちょうど6年です。とにかく先生方のスキルアップを図ろう、連携医をどんどん増やしていこうということで、研修会をたくさんおこなっています。これは東京23区に先駆けて、葛飾区医師会では精力的に行っています。

東京都の事業として予算化

マスター:認知症は早期発見・診断・治療の3つがすごく大切だと聞きました。葛飾区では高齢者総合相談センターとタイアップして「もの忘れ予防健診事業」を実施されているということですね。

東京23区で葛飾区が始めたことですが、非常に効果を上げていて、この5年で約1,000名近い認知症疑いがある方が発見され、診断、治療の方向に向かっています。2020年には、葛飾区でおそらく21,000人の方が認知症該当者になると推定されます。それで、「もの忘れ予防検診」を東京都が推奨する早期発見事業の一環として、葛飾区のようにやりましょうと、今年から東京都から事業予算が出る形になりました。

相談事例①ご家族の不安・心配

マスター:実際に認知症になった方の介護をされているご家族や認知症の方がつらい思いをしていると相談があると思います。そのあたり細かくお聞きできますか。

「先生のところで薬を飲んでいても母の記憶力が戻りません。」とよく言われますが、その時は「回復するのは難しいけど遅らせることはできる。ご自身で生活能力が維持できているのが一番大事。医療だけじゃなく介護を取り巻くケアが獲得できていればそれが成功例で、そこがターゲットポイント(目標地点)だと。だからお母さんは成功していますよ。」と言うと皆さん肩の荷が下りるんですね。これでいいと初めて気づかれるんです。

マスター:私も講習会の後などに「もう元に戻らない、良くなっていかない。」と言われますね。「今残っている機能あるいは記憶も含めて、それを維持していくこと自体が素晴らしい成功であり、凄いこと。それはあなたの成果ですよ。」と(伝えています)。

それをご家族が理解して頂けるととても安心しますよね。ご家族が不安な顔をしていると患者さんも不安になってくる。そこが問題です。いちばん大事なのは、一緒に見ていきましょう、一緒に歩んでいきましょうということです。「一緒」にという言葉が、ご家族が安心するフレーズのひとつだと、アンケート調査でも分かっています。

相談事例②退院したら認知症が一気に進んでいた?

マスター:病院から退院してきたら認知症が一気に進んでしまって、すごく悪くなったと、相談されることがあります。認知症というのは一気に進んでしまう病気なのでしょうか。

必ず正常と認知症の間のグレーゾーンがありまして、これは何年とか数か月とかで進行します。1~2週間、1か月で認知症が進行するということはあり得ません。例えば髄膜炎、慢性硬膜下血腫、脳梗塞があるとか何か他の脳の病気が関わっている場合、これは治療可能な病気ですね。もう一つは、入院して環境が変わった、ご自宅が変わった、介護する人が変わった、こういった環境の変化についていけない場合が多いですね。これが急速に“見かけ上は”進むことになります。

「せん妄状態」とは

先日も、嘔吐、下痢症、熱があって脱水があるご老人を点滴をやる目的で一晩入院してもらったのですが、夜中に騒ぎ出して点滴を抜いて病院からいなくなりました。警察や消防署みんなで探して自宅にお連れしたのですが、私のクリニックに通いながら点滴を2日~3日していると、元に戻ったんです。これは「せん妄状態」で、環境が変わったり、脱水や熱など苦痛を訴える他の病気があったりすると、軽い認知症がある方でも、認知機能がかなり低下していくことがありますが、一時的なものです。

マスター:環境をもう一度整えてあげると、だいぶ良くなるんですね。

他の病気で入院して手術しなきゃいけないという時に、「夜中に騒いだり、看護婦さんに怒鳴ったり、どうしたらいいでしょうか。」というお電話をよくご家族から頂きますが、手術して家に戻ったら(元に)戻りますから大丈夫ですよと。環境はすごく大きいですね。

引越しして周りの友達がいなくなると、友達を探すため徘徊することもよくありますよね。

「医療」「介護」「ケア」でしっかりと支える

マスター:うちのグループホームでも、相当に悪く手に負えない状態になってから、みてもらえますかとご家族がご相談に来られます。ドクター達と相談しながら、環境だとか脱水症状がないだとか身体的なものをチェック、安心してイライラしないように落ち着ける環境をスタッフ達が支えていくことによって、数ヶ月間いるとすごく落ち着いた状態になる事例がいくつもあります。

安心感を与えるのが、いかに大事なことかということですよね。

マスター:ご家族やドクター、介護に携わったスタッフ達がきちっとそういうものをわきまえて、知識を持って、そういう環境作りをしてあげるとご本人も落ち着きます。

認知症を取り巻く「医療」と「介護」と「ケア」の力。この3つでしっかりと支え、周りに安心感を与えられれば、かなりいい状態で認知症が経過しますね。

マスター:だから、ご家族も専門家に力を借りて、一人で抱え込まないようにして欲しい。

 相談事例③幻覚症状について

マスター:あと「幻覚」というか、そういったことについてもよく質問されるのですが。

認知症であればアルツハイマー型でもレビー小体型でも、かなりの頻度で幻覚や妄想はありますよね。当たり前だと思って頂いていいですね。よくある話ですよとご家族に話すと安心されますね。本人にも否定をしない、共感をすることです。あとは、幻覚・妄想についてじゃあ壁に映っているなら触れてみようねと一緒に触れてみる。そうすると錯覚だったと本人も納得できる。

相談事例④物を盗られた

マスター:もう一つ多いのが、息子さんとか娘さんのご家族が見ている(お世話している)時に、あんたが物を盗ったとか、そういったことが多いですよね。

身近な、同居しているご主人やお嫁さんはターゲットになりますね。大事なことは「否定しないで一緒に見つける」、あるいは「見つけやすい所に置いておく」、紛失したものに代用品があるなら「代用品を用意してあげる」というのも一つの手かもしれません。

認知症介護マニュアル

マスター:物を盗られたとかは介護の BPSD (周辺症状)ですが、他にもいろいろな症状があると、葛飾区医師会がわかりやすくまとめたマニュアルがあるということですね。

区のホームページにも、葛飾区医師会のホームページにも、「認知症・BPSD介護マニュアル」-認知症の介護で困ったら?-というものがあります。どなたでもご覧になれますし、対応の仕方が細かく書いてあるので、ご参考にして頂ければと思います。

マスター:他にもいろんな症状がありますので、専門のドクター達がまとめてくれたものを参考に、まずは否定をしないで共感してから入っていくというところですね。

 

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