ゲスト:葛飾区高齢者支援課から認知症コーディネーター 保健師の石川統太さん  テーマ:認知症・葛飾区の取り組みについて かつしかFM「なかまで介護」第16回(2019年3月7日放送分)

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「なかまで介護」
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なかまゲスト

葛飾区高齢者支援課から認知症コーディネーター 保健師の石川統太さん

認知症の現状と間違った認識

マスター:今日は葛飾区の状況や認知症コーディネーターのことを教えてください。

葛飾区は23区の中でも、高齢者の方の割合(24,5%)が約11万人と多く、高齢者に住みやすい街だと言われています。そのうち1万6千人(7人に1人)くらいの方が認知症じゃないかと、以前、番組の中で医師会の先生がおっしゃっていました。

認知症になったらおしまいという悪いイメージが広まってしまい、テレビでも、コンビニや病院に車がつっこんだりする映像を流しているので、怖いというイメージがついています。

マスター:でも、うちのグループホームにいるおじちゃんおばあちゃん達は穏やかです。

認知症の人の頭の中は、記憶をつかさどる脳の海馬が縮むとされています。詳しく調べると80歳以上の方の4人にひとり、90歳以上の方だと2人にひとりが、アルツハイマー型認知症の海馬と同じくらい縮んでいます。だけど縮んでいるからと言って認知症とは限らない。穏やかに過ごしている人も少なくありません。

認知症のメカニズム

マスター:どんなふうにすると認知症の方が穏やかに過ごせるか、詳しく教えてください。

歳を重ねると、体だけでなく頭も老化していきますよね。特定の脳の場所が縮んだりゴミが溜まったりすることで、もの忘れを中心とした症状がいろいろ出てきます。そのうえで生活に支障が出ていると、そこで初めて「認知症」という診断がつきます。

一般的なもの忘れはヒントがあれば思い出すのですが、認知症のもの忘れでは、例えば財布を他の場所に移動したことを忘れると、本人にとっては財布が無いのは事実なので、誰かに盗られたんじゃないかと訴えて、周りからは嘘つき呼ばわりされて混乱します。

自分の身になって考えてみる

マスター:お財布を置いたことを忘れてしまうので、無くなったとか盗られたとかになる。

それを深く理解するためには自分の身に置き換えることだと思います。皆さんも、お友達や目上の方と食事の待ち合わせをしたことをすっかり忘れていたということはありませんか?冷汗をかいて心臓もドキドキして、慌てて電話を取って言い訳する。認知症の人はそういうことがまた起きるんじゃないかと、いつも不安に思っているのではないでしょうか。それを指摘されたり文句を言われたり、お付き合いを断られたりすると、わざとやったわけではないので、大変に傷ついて落ち混んでいくのではないかなと容易に推測されます。

引きこもりや暴力は防御反応

店長:いつも責められているような怖がった目をされている方もいらっしゃいます。

外でいろいろな失敗をするので、家の中の安全なところに引きこもるなどしますが、これは最大限の防御反応です。追い詰められたり責められたりが続くと、怒りとか大きな声を出して、最終的に自分を必死に守ろうとする。それで周りから、暴力をふるった人だとか迷惑な人だとか言われてしまうと思うんですよ。

表現することには必ず理由がある

マスター:認知症の知識がなかったために、(認知症の父親に対して)間違った対応をしたかもしれないと反省はありますよね。

表現していることには必ず理由があるということを、皆さんにわかって頂きたいですね。認知症の方は記憶が抜け落ちてしまうことで日常生活に何かしらの支障をきたしています。例えば、『卵を買ってきて冷蔵庫に入れた』けど、『次に行くときにはそれを忘れてまた卵を買ってきた』とか。本人としては一生懸命やった結果がそれで100人いたら100の違うエピソードがあります。しかし現場の経験から間違いなく言えることは、認知症の方全員が『もの忘れを起こすんじゃないか、また人に責められるんじゃないか』といつも思っている。これは100%じゃないかと思います。

 どのように対応すればいい?

マスター:今度は対応の仕方について、教えていただけますか?

不安、不安と申し上げましたが、不安の逆は「安心」です。安心な気分にして差し上げるにはどうしたらいいかということを考えます。例えば先ほどのように、「お財布がない」という方がいるとして、ここに無いということは「夫が盗った」と言う方がいたとしますよね。そこで普通なら怒って否定したくなると思いますが、ご本人にとってそれは事実なので、寄り添うような声掛けをしていきます。「それは困ったね。でも大丈夫だよ、一緒に探そう。」と探していたら普段と別の場所で見つかってびっくりした。でも、「よかったね」とご主人が笑顔で言ってくれると、よくわからないけどよかったという結果になります。

マスター:これは大きなキーポイントですよね。

店長:でも、いつも穏やかに介護をし続けるというのは大変ですよね。

もし、「お家に帰りたい」と言って家から出ていって昔住んでいた家を目指そうとする人がいたら、「危ないから一緒にそこまで行きましょう」と寄り添って歩きます。歩いている間に新しい記憶が抜け落ちてしまいますので、自分の家に戻ってきて、「お家に着きましたよ、帰りましょうね」と言うと、「あっそうだったわね」と穏やかに導くことができます。

【事例紹介①冬なのにシャツ1枚→民生委員さんと一緒に世間話をしながら警察へ】

マスター:実際に事例を教えていただけますか?

街中を歩いていたら、冬なのにシャツ1枚で植え込みにうずくまっている方がいたそうで、その方(発見者)は「認知症サポーター養成講座」に出ていたので明らかに何かおかしいなあと思って、笑顔で声をかけてみると、「家がわからなくなった」ということで。住所も聞いたけどよくわからなくて、近所の知り合いの民生委員さんに声をかけて、一緒に世間話をしながら警察に届けることができたということでした。

【事例紹介②チャイムを押される→不安を和らげるため手を取り、歩く】

夜自宅に知らないおばあさんが尋ねてきて、「家がわかんなくなっちゃった」と言うので、これはおかしいなと思いながらとりあえず本人が言うまま一緒に歩いていくと、やはり家がわからない。段々と不安そうになって、「家族に怒られちゃう、私どうしよう」と言いだしたので、「大丈夫ですか?疲れましたね」と世間話をしながら手を取りながら、近くの明るい公共施設に向かって、そこで警察を呼んでもらった。警察が来たら安心したのか、住所や名前がスラスラと出てきて無事にお家に帰れたということでした。

記憶は残らなくても、感情は残る

店長:今、怒られちゃうという話が出ましたけど、粗相した下着を隠すこともそうなんです。

それを怒らないで、そっと始末してあげることも必要なのかもしれませんね。

記憶は保てないけど、嫌な思いしたとか楽しかった嬉しかったとか、感情は残ると言われているので、いい気分で過ごしてもらうことが、その方の生活の質を上げることになります。

葛飾区の認知症対策

マスター:葛飾区としての対策について教えてもらえますか?

2つの大きな枠での対策があります。ひとつめは「認知症について正しく理解してもらうこと」。葛飾区医師会の先生方や高齢者総合相談センターのご協力で進めています。取り組みとしては、①「認知症サポーター養成講座」を区内各地で実施、②広く楽しく認知症を知ってもらうイベント「もの忘れ予防フェスタ」の開催、③ガイドブック「ヒトゴトじゃないよ認知症」を作って、高齢者総合相談センターに置くなどしています。ふたつめは「認知症に早く気づいて早く必要な支援をおこなうこと」で、①区内14か所の高齢者総合相談センターで「もの忘れ相談会」を開催。認知症に詳しい先生がじっくり(30分)話を聞いてくださいます。また、②区の総合アプリ「ひょっとして認知症かな?チェック」にはご家族向けの質問もありますので、使ってみてください。あとは、③体だけでなく脳の健診ということで、23区で初めてスタートした「もの忘れ予防健診」というのを葛飾区医師会の先生方の協力でおこなっています。対象の方には受診券を送付していますので、気軽に相談してみてください。これらは区のHPで「認知症」と検索すれば、出てきます。

メッセージ

マスター:最後に伝えたいことがあればお願いします。

もし皆さんの地域で気になる方がいらっしゃいましたら、笑顔や声かけでその方の気持ちが和らぐこともありますので、ぜひ声をかけて高齢者総合相談センターにご相談頂ければと思います。認知症は誰でもなる可能性があります。だから『他人事じゃない』と、みんなで認知症を正しく知って、みんなで支え合う。認知症になっても、その方らしく住み慣れた葛飾で、みんなで力を合わせていきたいなあと思っています。

 

 

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