ゲスト:葛飾区医師会 訪問看護ステーション高木 さん かつしかFM「なかまで介護」第44回(2019年12月12日放送分)

  かつしかFM(78.9Mhz)から発信する地域包括ケア
「なかまで介護」
毎週(1~3週)木曜日10:00-10:54 放送中!

このサイトでは、ラジオ放送から数週間遅れで、youtube再放送版を公開しております。

なかまで相談室

高齢者総合相談センター青戸 新美 さん

事例紹介:家族信託について

マスター:最近あった事例を教えていただけますでしょうか。

認知症に関する相談がとても多いのですが、最近新しく出てきたのは「家族信託」に関わる相談なんです。

マスター:「家族信託」って、あまり聞いたことがないですね。

弁護士や司法書士など、法律の専門家の中でも詳しい人がまだまだ少ないと言われている新しい方法のひとつです。

マスター:私も知りたいのでぜひお願いします。

「家族信託」は、親が将来認知症になった時に備えて、財産の管理をお子さんに託すことを契約しておく制度です。例えば、親御さんに介護が必要になって、そのうち認知症になって介護保険サービスを使っていたけど、そろそろ自宅で暮らすことが難しくなった。施設に入りたいけどお金がかかるので、家を売ってその費用に充てたいというときに、それがご本人の持ち物だとしても、認知症だと判断能力が低下しているということで、契約能力がないとして売ることができません。

マスター:認知症の講習会をやらせていただきますが、大手証券会社や銀行、不動産関連など、認知症の可能性がある場合には色々な契約書を結んでも基本的にダメになる。

お父さんに使う介護費用がかさむようになったので、お父さんの定期預金を解約したいという場合でも、銀行としてはご本人の財産が不正に利用されないように、ご本人が認知症になっていると口座が凍結されて下ろせなくなってしまう。なにも備えをしていないと、家庭裁判所で大変な手続きをして、成年後見人を通してやっとお金が使える、家が売れるということになってきます。

家族信託の手続き

マスター:手続きがちょっと大変ですよね。

そういった事態を防ぐために、「将来、自分が施設に入ることになって家を売る必要があったら息子に託します」、「介護費用がかさむようになったら定期預金の解約は娘に託します」など契約しておく。公証役場に「公正証書」として契約書を正式に届け出ておく手続きが必要です。

アパートやマンションのオーナーの方の場合

マスター:遺言とは別に、身近なお金や権利関係を文章にして誰かに信託しておくのですね。

生前に困らないようにするために使えるのが、「家族信託」です。特にアパートやマンションのオーナーの方では、業者との契約になるので認知症になっていると修繕ができない、あるいは新しい入居者と契約することもできなくなってしまうので、信託で「管理や修繕の対応は息子に託します」というようにしておくと、困らずに済むことになります。

まとめ

マスター:「家族信託」といわなくても、自分の心配事を高齢者総合相談センターに相談すると、実はこういう制度がありますよと色々なものを出してくれる。

日々勉強しながらですね。「家族信託」にはデメリットもあります。例えば、アパート経営で赤字になってしまった場合、「家族信託」の対象物件に関しては赤字と認められず、収入がすべて課税対象になってしまいます。実際に「家族信託」を考えてみようという方は、「家族信託」に詳しい司法書士や税理士、弁護士に相談してから進めていただきたいと思います。

なかまでゲスト

葛飾区医師会 訪問看護ステーション高木 さん

訪問看護ステーションの現状

マスター:在宅療養に関して、特に訪問看護ステーションで頑張っていらっしゃいますが、現状について教えていただけますでしょうか。

現状と将来像についてお話しさせていただきます。現在、全国で訪問看護ステーションは1万箇所を超えていて、ここ10年で2倍に急増しています。一方で、昨年、東京都では250箇所の訪問看護ステーションが設立、100箇所が廃止・休止といった現状もあります。新しくできたところから潰れるなど、統合で名前が変わることもありますが、厳しい現状もあります。葛飾区では約40箇所の訪問看護ステーションがございます。

3つのキーワード

マスター:それだけ需要は増えているんですよね。

訪問看護を取り巻く現状と今後については、キーワードが3つあります。1つめは「超高齢化社会の進展」です。2025年には75歳以上の後期高齢者のお年寄りが人口の1/6になると予測されていて、入院される方の7割が65歳以上の高齢者という現状から、ますます具合が悪くなっても簡単に入院ができなくなると思います。独居や高齢世帯、認知症高齢者も増えてきます。

マスター:75歳以上が1/6になるって、すごく多いですよね。

そうすると、在宅で医療や介護を受ける人が増えることが予想されます。暗い話題ばかりでなく、病気にならないように予防をすれば現状は変わる可能性があります。2つめのキーワードは「多死時代の到来」です。高齢化によりおのずと死亡者も増加して、このままでは死に場所を確保できない「看取り難民」が急増することが予想、心配されていて病院死を減らして在宅死を増やそうと、厚労省が考えている構想です。

 マスター:多死時代の到来ね。それは確かに大きいですね。

1950年代には8割以上の方の在宅死が当たり前でしたが、核家族化が進んで2000年を過ぎると、病院死が8割と逆転して、厚労省は自宅や介護施設での看取り率25%を目標にしています。ちなみに葛飾区は在宅死率1位ということで、目標はほぼ達成しています。

マスター70年前くらいの話だからね。確かにだいぶ違うね。

親に聞いても、皆さん貧困だから病気になっても病院に行かずに、もしかしたら癌だったかもしれないけど自宅で亡くなったという話も聞きます。

店長:「1億総中流階級」って言われた時代もあったけど、その前ですからある意味差があった時代ですからね。

3つめのキーワードが、「住まいの多様化」です。高齢者の住まいは、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、老人保健施設、認知症グループホーム、サービス付き高齢者住宅など、高齢者施設での生活スタイルも増えています。

ACP(アドバンスケアプランニング)とは

マスター:次に、訪問介護ステーションで活動されている中で、非常に大切なものがあってそれを勉強したいとお聞きしています。

ACPは「アドバンスケアプランニング」といって、「もしものときに自分がどのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないか、自分の価値観などを前もって大切な人たちと話し合っておいて、その都度、文章に残して共有する取り組み」を言います。ですので、一人ではなく相手がいることが大事になります。誰でもいつでも命に関わる大きな病気やケガをする可能性があります。

マスター:交通事故とか急に発生することもありますよね。

生命の危険が迫った状態になると、約70%の方が意思決定できなくなると言われています。そこで、意思決定能力が低下する場合に備えて、予め終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うとか、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味します。

マスター:どういう感じで残しておくのでしょうか。

医療機関でも重要視していて、当施設でも大学病院の研修で毎月ACPについての研修をやっています。その時々で気持ちが変わってもいいですし、本人の気持ちを重視することがポイントになります。経済的な事情や家族の事情でその通りにならないかも知れないですが、それを考えて行こうとする姿勢は大事です。

 店長:今まではなんとなくそういうものって避けて通っていきたいと思っていたけれど、そうではないということですね。もっと明るく考えないといけないですね。

 マスター:それは自分のためになるということですよね。自分が伝えられないけど家族とかに残しておけば、お医者さんや色々な方々が、文章やチェックリストをその方の意思と判断して、なるべく希望に即してくれるということですね。

そうですね。聞いていないと、あとで困ります。

 事例紹介:認知症の方の意思表示の重要性

マスター:高木さんが在宅で訪問された中で、ご家族やご本人に早めにそういうことをお伝えしているということですね。認知症の方のお話もお願いします。

アルツハイマー型の認知症の方が増えていますが、5年から10年の長い経過をたどるということから、旅に例えて、「アルツハイマージャーニー」といわれています。終末期になると言葉も発せられなくなるし、自分の意思も言えなくなる、口から食べられなくなる。そういう形で入院して、退院するときに中心静脈栄養というカテーテルを入れて帰ってきた患者様の例になります。

その方はしばらく在宅を続けていましたが、足の付根の鼠径部にいれていて、表面にでている糸が取れて抜けたらどうしようという話になり、介護疲れのある奥様が自分はどうしていいか決められないということで、別居している長男が代理人となって話し合いをして、今度はCVポートを入れることになりました。認知症なので、取ってしまうので、足の方に付けて欲しいということで、結局それをつけることになったのですが、あとで振り返ってみたら、末梢からの点滴に切り替えて自然な看取りを選択することもできたのかなと思います。実の息子さんであっても、必ずしも責任ある答えを出す際の代弁者にはなれないですし、難しい決断だったと思います。それにつけても、意思表示ができるときに本人の意思を聞いておくべきだったと思います。

 メッセージ

マスター:最後にひと言お願いします。

私達は利用者やご家族の話に耳を傾けて思いを受け取り、そこに手を当てることこそが、「訪問看護サービス」だと思っています。そして、医療と介護をつなぐ専門職として、利用者ご家族だけではなく、主治医の先生、ケアマネジャーさん、サービス事業者、行政の方など関わる全ての機関の方々に安心をお届けしたいと思います。

 

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