ゲスト: 葛飾区医師会から認知症対策委員会の赤畑先生 テーマ:認知症について かつしかFM「なかまで介護」第11回(2019年1月17日放送分)

  かつしかFM(78.9Mhz)から発信する地域包括ケア
「なかまで介護」
毎週(1~3週)木曜日10:00-10:54 放送中!

このサイトでは、ラジオ放送から数週間遅れで、youtube再放送版を公開しております。

 

なかまで相談室

葛飾区高齢者総合相談センター東四つ木 社会福祉士の林さん

【事例紹介①携帯の使用や手続きについて】

マスター:早速ですが、身近な事例を教えて頂けますか。

携帯や家の電話を換えたけれどやり方がわからないとか、その後の手続きが分からなくてどうしたらいいか、という相談がいきなりきます。

マスター:65歳以上の高齢の方からのご相談ですね。そういう時はどうするのですか。

どういった状況かわからないので、書類とかがお手元になければ、お家に伺って一緒に状況を確認して、どこで困っているのかを一緒に考えます。

【事例紹介②男性のための企画「男のひみつ基地」を実施】

マスター:東四つ木で特に力を入れている「男のひみつ基地」について、教えてください。

最初のきっかけは相談からでした。例えば、お一人で認知症の方とか、パートナーを喪失された方とか、仕事を退職されてその後やることがない方、特に男性ですね。

マスター:女性はみんな即仲間になるけど、男ってダメなんだよね。

そういう地域と遮断、孤立している高齢者の相談が増えています。うちのセンターでは、サロン活動や自主グループ、オレンジカフェなど、多くの方に来て頂いているんですが、ほとんどが女性の方。たまに来た男性の方でも、女性が多くて行きづらいという声もあったので、男性限定で活動ができないかと思い、去年の8月からスタートしました。

マスター:いいですね。「男のひみつ基地」ではどのようなことをやっているんですか。

例えばマージャンとか囲碁とか将棋、卓球ですね。特別養護老人ホーム「東四つ木ほほえみの里」の1階を全部開放しているので悠々と卓球ができます。リピーターもどんどん増えています。特に人気のあるのは囲碁ですね。地域の民生委員さんからのご紹介で、囲碁を優しく教えてくれる先生がボランティアさんとして協力して、一緒に運営して頂いています。

マスター:みんなが協力して支えていますね。どのくらいの回数や時間でやっていますか?

第2水曜午後1時~3時の2時間、今のところ月1回で参加費は100円。参加条件は「男性」で、特に高齢者じゃなくても来られるようにしています。月2回やって欲しいと参加者からご要望を頂いているんですが、人手の関係もありまして、ちょっとまだ月1回という感じですね。※お菓子と飲み物(コーヒーやお茶などフリードリンク)を配布

マスター:総合相談センターさんも人数が限られていて、他にもいっぱいよろず相談をやっている。だから民生委員のボランティさんも含めて、周りに住んでいる人たちでぜひ協力するよという方が増えれば、回数を増やすことも可能なんだよね。

なかまゲスト

葛飾区医師会 細田診療所 赤畑先生(認知症対策委員会)

葛飾区の認知症対策

店長:赤畑ドクターは一般の患者さんも診ていらっしゃるのですか。

かかりつけ医として普段は頑張っています。認知症の患者様に対しては、診療にお時間が少しかかるので専門の予約の時間帯を設けて、「もの忘れ外来」という形で認知症の診療もさせて頂いております。

マスター:葛飾区の認知症の対策としてどのような活動をされているのでしょうか。

葛飾区は東京都の中でも高齢化率が非常に高い地域で、認知症の患者さんもとても増えています。葛飾区医師会では、稲葉先生が認知症対策委員会を立ち上げられて、定期的に会議を開いて対策をしています。いくつか取り組みをしておりますが、まず一つめは「もの忘れ相談会」です。14箇所ある地域包括支援センター(高齢者総合相談センター)で年に1回ずつやらせて頂いています。「広報かつしか」にも載りますので、ご興味ある方は参加して頂ければと思います。

マスター:先程の東四つ木でも「もの忘れ相談会」を行っているんですね。

認知症についてわかってきたことが最近だんだん増えてきていて、薬も新しくできていますので、かかりつけ医それぞれが認知症治療の診断レベルアップを図っていくための認知症の勉強会を年に4回程度開催しています。

「認知症連携医」と「認知症サポート医」

マスター:ドクターたちも新しい情報や勉強を積み重ねられているということですね。

研修会に出た方を「認知症連携医」として葛飾区医師会で認定、区内で113名が活躍しています。普段はかかりつけ医として内科全般、風邪だとかを診てらっしゃる先生方でも、もの忘れの相談に乗れるようにということで勉強させて頂いております。さらに、東京都の資格に「認知症サポート医」があります。これは、厚生労働省からサポート医を要請しましょうと各都道府県で要請していて、区内には28名います。かなりたくさん講義を聞かなくてはなりませんが、その後も継続して勉強をして、認知症についてより高度な相談や治療に対応できるように対策しています。

マスター:身近な113名のドクターは「連携医」として勉強されていて、認知症をもう一段深く勉強されたドクターが「サポート医」として28名いらっしゃるということですね。

葛飾区医師会のホームページに掲載しておりますので、どの先生がサポート医なのか、もし万が一かかりつけの先生が認知症のことを相談してもなかなか対応して頂けない時など、参考にして頂くといいんじゃないかなと思っております。

 店長:認知症は成人病のひとつですよと言ってくださったことで、ご自身もご家族も周りの理解を得るため、堂々と隠さずにオープンにすることが大事ですよね。

恥ずかしがるような病気では決してありません。生活習慣病の一貫です。ある程度のご高齢になれば、もの忘れが出てきますし、80代以上では5割くらいの方が認知症になりますので他人事ではないんですね。いずれ僕も何十年かすれば恐らく認知症を発症するでしょうし、避けられることではなく自分たちのこととして共有して考えなければなりません。

早期発見・早期診療・早期治療が重要

マスター:早期発見・早期診療・早期治療と病気との関係についてはいかがでしょうか。

認知症はある日突然なる訳じゃなく、段階的に徐々に徐々に進んでいきます。ある程度進んでしまって一人では生活できなくなった状態のことを「認知症」と表現し、もの忘れは出ているけど日常生活は可能という段階は「MCI(軽度認知機能障害)」と言いますが、その段階であれば、薬やいろいろな予防法で日常生活の習慣を変えることでも、もの忘れのしやすさ、日時や場所がわからなくなるとかも、少し蘇ってくるというふうに言われています。しかし完全に認知症と言われる段階になってくると、なかなか元の状態には戻れない。そのためにも、なるべく早い段階で見つけて対策していくことが非常に大事になります。

マスター:軽度の認知症であれば、戻る可能性や進行を抑えられるということですね。

難しいのが、その段階ではしっかりした部分もたくさん残っているので、なかなかご本人が認めたくないし知りたくない。周りが困ってしまう状況になってから、やっと病院にいらっしゃる方が非常に多いのですが、その段階で出来ることは限られています。ご自分の問題として、早めに気づいて病院に来て頂きたいのが私達の考えです。

マスター;早期発見できた方やMCI状態の患者さんの治療は問題点なく進みますか?

一番の問題は、継続して通院して頂きたいということですね。もの忘れですから、お薬を飲むことも通院することも忘れてしまう、といったことが問題になります。それから、お一人暮らしの場合、周りでみる方がいらっしゃらないとお薬を飲むことができない方もいらっしゃいます。一度、病院で診断を受けてお薬が出たからそれでお終いではなく、まずはお薬を飲まないといけない。お薬以外でも運動や栄養の習慣を良くすることとかもすごく大事で、診断を受けてからの毎日の取り組みが非常に大切になってきます。

【事例紹介:お一人暮らしの場合】

マスター:具体的な事例みたいなものはございますか?

特に目立つのは、お一人暮らしの方で、たまに娘さんや息子さんが実家に帰った時に、どうも様子がおかしいと連れてきて、認知症の診断がつきました、薬が出ました、そしたら息子さんは「お薬飲むんだよ、頑張るんだよ」と言って帰っちゃうんですね。それで一ヶ月後に来てみると、お薬を全然飲んでいなかったということがやっぱりあるんです。そういった方は大勢いらっしゃいますので、お薬を飲ませるための電話をかけて頂くとか、ヘルパーさんに訪問して頂くとか、そういったことが必要になってきます。

マスター:こういう時に高齢者総合相談センターに電話して繋いでおくと、その後のフォローにも結びつく可能性があるんですよね。

認知症と診断がついたときには、介護保険の申請をして地域包括支援センターに相談にいくようにと必ずお話しするんですね。医療と介護、両方とも必要になってくるからです。

【認知症の進行について】

マスター:先程のお話のように、息子さんが時々しか来られない、ご本人が飲むのを忘れてしまうと、MCI状態の場合でも経過によって悪化していく可能性は強いのでしょうか?

認知症は放置しておけば悪化してしまう病気です。最終的には自分のことも分からなくなる、身の回りのことが自分でできなくなる、一人では生活できなくなってしまいます。それを少しでも遅らせるのがお薬ですから、飲まなければやっぱり進行してしまいます。5年くらいで最終的な段階に入ってしまうことが多いと思います。なるべく現状を長く維持できるためのお薬を使って、その他の生活習慣の改善をして頂くことがとても大切です。

マスター:薬とかそういう状況を作らないと、もっとそれが早く進んでいってしまう可能性が強い病気だということですね。

さっき言ったことをすぐ忘れる、同じことを繰り返す、冷蔵庫が同じもので一杯になってしまうとか、そういったことが問題になる訳ですけども、今のお薬では「記憶」に関しては治らないんですね。だから薬が始まっても、「もの忘れが全然良くなりません」ということを皆さまおっしゃいますが、日本全国どこにいっても「記憶」に関しては蘇りません。物事を計画するとか気持ちが穏やかになるとか、位置感覚がわかるようになるとか、注意力がついてくるといった、目に見えないところが多少は良くなるといったお薬なんですね。

店長:進行を遅らせるというものは何かあるのでしょうか?

直接進行を遅らせる訳ではなく、少し症状が良くなるという程度です。ただ、すごくうまくいって、5年前と同じ認知機能の状態でずっと今もいらっしゃるという方も中にはいらっしゃいます。薬の効き方についても千差万別なんですね。認知症自体がたくさんの病気の集まりなので、電撃的に進行している病気だとか、非常に介護の手間がかかる認知症だとかたくさんいらっしゃいます。

本人の不安と家族の負担を軽減

店長:ちょっと暴力的になったとか繰り返すとか、それが穏やかになってくるだけで介護する側も少し気が楽になるんですよね。

介護する方の負担が減るといったことが治療の目的の一つです。治療してお薬を出したことで、すごく生活が楽になりました、穏やかに生活できるようになりました、というお便りを奥様から頂くとか、そういうことがよくあるので、ぜひ相談してください。

マスター:ご家族が楽になるということは、ご本人もそれだけ穏やかな気持ちでいられるので、いいことなんですよね。

認知症になるというのはすごく不安なことだと言われています。想像して頂きたいのですが、真っ暗な舞台の上で自分の周りだけにスポットライトが当たっている状態、過去も未来も、ここがどこなのかもわからない状態です。どうしてここにいるのか、これから何をすればいいのか、誰が近くにいるのかもわからないのが認知症の状態ですので、それを和らげることがとても必要になってきます。

ご家族へのお願いとメッセージ

マスター:日々、患者さんと接していて、ご家族の悩みも聞いていると思うんですが、日頃ドクターが強く感じていて伝えていきたいということがあれば、教えて頂けますか。

認知症のご家族の方には認知症についての勉強がすごく必要だということですね。もの忘れが続いていて、こうしちゃダメと強く言ってしまうなど、ご家族の対応の仕方ひとつで認知症の症状が変わってくることもありますので、ぜひ勉強して頂きたいですね。

葛飾区医師会では「もの忘れ予防検診」や「もの忘れ予防フェスタ」を開催して、認知症の早期発見・早期治療に務めていますので、ぜひ利用して頂きたいと思っています。

 

介護についての悩みやご相談など、なんでも結構です。
ぜひ番組までメールください。

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